第1話 〜 ヨーク 〜 「ひぃい〜! 何じゃこりゃ〜! た、大変だぁ〜!」 ヨークという農村で叫び声が発生した。 「どうした?」 叫び声の元へ村人達が集まって来た。 「死、死んどる!」 「こりゃ〜酷い!」 「悲惨な殺され方じゃ!」 無残に食い散らかされた死体がそこにはあった。 「何の騒ぎじゃ!」 一人の老人がやって来て、集まっていた村人達に問いかけた。 「長老!」 「し、死体です! 内臓をえぐられ食い散らかされた死体です!」 村人達は長老に答えた。 「またか・・・。」 長老は答えた。 「これで20件目じゃぞ! 犯人は誰なのじゃ〜!」 「どこに犯人が潜んでおるかわからん! この村人の中にいるのか?」 村人達は次々に犯人について想像し、自分の考えを口に出した。 ヨークでは食い散らかされた死体が特徴の連続殺人が発生していたのだ。 「 みなの者、安心せい! ダゴスから人を呼ぶ!」 長老は集まっていた村人達に言い放った。 「ダゴスから人を呼ぶのか!」 「これで安心して暮らせるぞ!」 悲嘆にくれていた村人達の顔が希望に満ちた顔に変わっていった。 次の日、村人達の期待を一心に集めた人がダゴスからやって来た。 「へぇ? あれがダゴスから派遣されて来た人か?」 「随分と若い女の子だな? あんなんで大丈夫か?」 「人違いじゃねーか? ダゴスの技能者には見えないぞ!」 ライは若い女の子だったので村人達の想像と違っていたのだった。 新人という感じだったし、実際に新人だった。 「長老、こんな若い女で本当に大丈夫なのですか?」 「別の方を呼んだ方が良かったのでは?」 ライを見た村人達が次々に長老に問いかけた。 「ええ〜い、文句を言うでない! この貧乏な村が出せるお金ではこれが限界なんじゃ!」 長老は村人達を叱咤つした。 ダゴスの人を雇うのはただではなく、それなりの資金が必要だったのだ。 「ダゴスから来たフェミテの神官ライと申す者です。」 ライは長老に挨拶した。 「フェミテの神官? あの魔力レベルが最下層で有名なフェミテ? いや、失礼・・・。」 長老は微笑んでライを馬鹿にしているように言った。 「はい! 確かにフェミテの力は最下層です。」 ライは笑顔で長老を見ながら言ったが、瞳は笑っていなかった。 「まぁ、それはともかく。 約束の金じゃ。」 長老はライにお金の入った袋を手渡した。 「確かに200ギルダを受け取りました。」 お金を確認するとライは言った。 「それじゃ〜、早速事件を解決してくれんかのう?」 「私は構いませんが、今から犯人を退治してもよろしいのですか?」 「そうじゃ。 出来るだけ早く解決して欲しい。」 「分かりました。」 長老とライが目線を合わせながら会話を交わした。 ライが手を構えると次の瞬間、光の玉が手から発射された。 光の玉は長老に当り爆発した。 「ぬかったわ!」 長老は爆発で吹っ飛びながらそう言った。 彼の姿は人間から化け物へとみるみる内に変わっていった。 「ひぃ〜! 長老が化け物だったなんて・・・!」 「逃げろ! ここにいたら戦いに巻き込まれるぞ!」 危険な状況だと感じ取った村人達は逃げ出し一目散にその場から走り去った。 「お前ごときの魔力で私を騙せるとでも思ったの? 私はこう見えてもダゴスの一員だし、フェミテの神官の中では強い方なのよ! 普通の神官の下級レベルの力はあるのよ!」 ライは化け物を睨めつけながらそう言った。 「一番安い奴をよこせといったのだが、さすがはダゴスだな。 一番安い奴でこれ程とわな!」 化け物はそういうとライに飛びかかって来た。 激しい豪音が響き、土煙が舞い上がった。 数分間の戦いの末、決着がついた。 現場には戦いで破壊された建物の瓦礫と化け物の肉片がバラバラに散らばっていた。 こうしてヨークの連続殺人事件は解決した。