第2話 〜 トロン 〜 「ひい〜岩がしゃべったぞ!」 「岩男が出たぞ〜!」 トロンという村の北側にある細い峠道で岩男が出没するようなった。 岩男は岩で出来ている巨人で、トロンの村人達を苦しめていた。 出没しては通行人を食らうのだった。 トロンは陸の孤島と言っても良いぐらいの山深くにあり北の峠が唯一の出入り口だった。 この北の峠が遮断されたら生活物資の搬入が出来なくなり死活問題になるのだ。 「岩男を何とかせにゃ〜いかん!」 「北の峠を安全に行き来できるようにせんとこの先、生きてはいけぬ。」 村人達は毎晩集まって対策会議を開いた。 「ダゴスに頼むしかない! 村中の金をかき集めろ!」 話し合った結果、村人達はなけなしのお金をかき集めてダゴスに頼む事にした。 数日後、ダゴスからフェミテの神官ライがトロンにやって来た。 「おお、ダゴスから派遣されて来た人が来たぞ!」 「これで北の峠が通れるようになる!」 村人達は期待を込めながらライの周りに集まって来た。 「これは村中でかき集めた160ギルダのお金です。」 村人の代表者がお金が入った袋をライに渡そうとした。 「情報ミスです、残念ながら私の手には負えません。 もっと、お金を出して強い人を呼んで下さい!」 ライは差し出された金銭袋を押し返した。 それは無理のない事だった。 ライはトロンに来る途中に北の峠を通って来たので岩男を見て来たのだ。 一目で岩男は自分より強いとライは悟ったのだった。 村人の願いを聞いて上げたいとは思ったのだが仕方なく断る事にしたのだ。 「そ、そんなぁ〜! 村でかき集めれる金はこれが精一杯ですじゃ〜!」 村人はライに泣きついた。 「だったら無理です。 本来、最下級の私でさえも200ギルダが必要なのです。 ただでさえ、ダゴスの人は不足気味です。 とても160ギルダで呼ぶ事は出来ません。 諦めて下さい。」 厳しい顔をしながらライは言い、村人達の手を払って帰ろうとした。 「お願いですじゃ〜! 帰らないで下さい!」 「我々を見捨てないで下さい! お願いします、お願いします!」 村人は次から次へとライに頭を下げた。 結局、ライは自分より格上の岩男退治を引き受ける羽目になってしまった。 トロンに留まったライは村人達と会議をした。 「私一人で戦う事はできません。 みんなで戦うしか勝ち目はないです! この村の武器をかき集めて下さい!」 「分かりました!」 村人達は家に戻り武器になりそうなモノをかき集めた。 使い物にならないような錆びた銃や、剣が2〜30個程度とダイナマイトが十本程度集まった。 ライはダイナマイトに注目した。 トロンは昔、銀の鉱山で栄えていたのでその名残でダイナマイトが保管されていたのだった。 「このダイナマイトで岩男を吹き飛ばせるわ! みなさん、頑張りましょう!」 ライは自信に満ちながら村人達に言った。 次の日、ライと村人達は岩男退治に出かけた。 ライが岩男をおびき寄せ、仕掛けてあるダイナマイトで破壊する作戦だった。 「勇気を持って戦いましょう! それじゃ〜、行くわよ!」 「おお! トロンの村を守るのじゃ〜!」 北の峠にたどり着くとライと村人達は血気盛んに岩男と戦う事になった。 ライが岩男をおびき寄せる為に一人で前に出た。 ダイナマイトの起爆スイッチを持った村人達は岩陰に隠れ、 岩男が来るのを待っていた。 「大丈夫かの、あの若いの?」 「大丈夫! あの人にこの村の運命がかかっとるんじゃ〜! 信じるしかない!」 村人達はライが上手くやってくれるように願っていた。 ライは村人達の期待を一身に受けながら一歩づつ進んで行った。 しばらくすると岩男が現れた。 岩男はライを見るなり、襲いかかってきた。 「は、速すぎる! 避けるので精一杯だわ!」 予想以上に岩男の動きは速く、ライは避けるので精一杯だった。 ライが避けて空を切った岩男の拳が地面に当たると大きな穴が出来た。 凄まじい破壊力を持つ岩男の拳が次々と降り注がれた。 豪音と土煙が舞い上がり、岩男とライの戦いは激しくなっていった。 岩男は山の木々をなぎ倒してはライに投げつけた。 ライは攻撃仕返そうとしたが避けるだけで精一杯だった。 逃げるだけだったのだが岩男の攻撃が時々当たり確実にライを傷つけていった。 ライは傷を負いながらも逃げ回わり、罠が仕掛けているところに岩男をおびき寄せようとした。 「なぜ、上手くいかないの! 頼むからこっちに来て! 体も傷を負っている、これ以上は戦えないわ! 時間をかけていられない!」 色々試してみたがなかなか罠のしかけられている地点におびき寄せる事が出来なかった。 ライは岩男の攻撃を受けて確実に弱っていた。 戦う力は後少ししか残っていなかった。 「肉を切って骨を断つしかない! 攻撃を受けて、罠に誘い込むしかないわ!」 ライは攻撃をわざと受ける覚悟を決めた。 岩男の攻撃をライはもろに受けながらも罠が仕掛けられている地点に少しづつおびき寄せていった。 魔法力で防御しているが、その防御の上からでも岩男の攻撃はライを十分に傷つけていた。 しかし、捨て身の戦法が功を奏し罠がある地点におびき寄せる事に成功した。 「今よ!」 ライがそう言うと、ダイナマイトが勢いよく爆発した! 岩男は吹っ飛んだが、ライも岩男の攻撃で瀕死の重傷を負った。 重傷を負ったライはトロンの人々に運ばれ、ダゴスに帰って行った。